2007年11月アーカイブ
●博多も久しぶり
博多といえば九州一の大都市だが、久しく来ていなかった。
別に避けていた訳ではないが、どうも大都市の居酒屋より
地方の店の方が性に合っている。
前にも書いたが、空いている店が好きなのも理由の一つなのだろう。
しかし、日本百名居酒屋と銘打っているのだから、
私の個人的趣味で取材店を決めるわけには行かない。
そこで、博多の名店「さきと」と「寺田屋」を訪れた。
太田さんもこの二軒は絶対外せないということで、ほとんど決まっていたのだが。
まずは「さきと」。少し前から全席禁煙になったので
タバコを吸う私にはちょっと辛いが、さすがに名店。酒も肴も満点だ。
特に日本酒は福岡県の地酒を中心に日本中の名酒がそろう。
それを骨董市で見つけてきたという古い酒器で楽しむ事ができるなんて、
日本広しと言えどもこの店ぐらいではなかろうか。
そして肴はごまさばだ。大分の琉球という料理と同じ系統だろう、
鯖の刺身をゴマと九州の甘めの醤油で浸ける。
そのまま食べても美味しいが、お茶漬けにするとまた絶品だ。
私も自宅で作ったことがあるが、鯖の鮮度と脂の乗りが違う。
やはり、玄界灘の鯖は美味しい。
ちょっと横道にそれるが、東京の居酒屋でごまさばと言うメニューを見たことがあった。
東京でごまさばとは珍しいなと思い注文すると、なんとゴマサバの刺身だった。
実は、鯖の刺身にはマサバとゴマサバがあるのだ。
ちゃんと鯖の種類までメニューに記してあるのは大変素晴らしいことだが、
博多の人がこの店でごまさばを注文するととんでもないことになることは確実である。
次は「寺田屋」。店主はまだ若いが、考え方のしっかりした良い店を作っている。
最近、新しい店を出したそうで、そちらへも顔を出さなければならないので、
「寺田屋」のカウンターにずっといないのがちょっと寂しいが。
ここは焼酎にして、料理を中心に頂いた。
カウンターの上に並ぶ大皿料理は大変美味しそうで次々に頼みたくなる。
まず目を引いたのはピーナッツモヤシ?だ。
どうもモヤシのようなのだが、太いので聞いてみたら、
これを油で揚げるのだという。なかなかの味。
ビールや焼酎に良く合う。
もう一つなんだか分からないラップに包んだ丸いものが目の前にある。
マーブル模様で、生牡蠣を詰め込んだようにも見える。
自家製ゴマ豆腐と聞いてびっくり!早速食べてみた。
美味しい、と言うより珍しいものだ。
味はこってりとしていて酒の肴になるが、ラップを外すと小さなざる豆腐のようになる。
カウンターに置いたときそのままでは誰も頼んでくれないので、
ラップで包んでなんだか珍しいものに仕立て上げたそうで、その感性に感心した。
●とっても健康的な居酒屋のご主人
居酒屋のご主人と言えば、不健康でなくてもあまり健康そうな人は
多くないのではなかろうか。
まして、ウルトラマラソンに出るようなご主人は滅多にいない。
しかし、博多の親富孝通り(親不孝ではなく親富孝)近くの
「二升瓶」のご主人はウルトラマラソン(100キロ以上のマラソン)に
何度もチャレンジしているそうだ。
店内にはご主人の勇姿に加え、東国原宮崎県知事(まだ当選前)との
ツーショットの写真が沢山飾ってある。
その他は、ガラクタともいえる古くからの民具などが、
いかにも古い居酒屋然と飾ってある。
ご主人は、何年か前までまったく運動もしないで、
居酒屋の仕事だけにまい進していたらしいのだが、
突然マラソンをはじめ、今では200キロを超える
ウルトラマラソンにも挑戦するというのだから、驚きだ。
人間はそんなに急に変われるものだろうか?
私も明日から酒もタバコも止めて、ジョギングでも始めようか。まあ無理でしょうが。
●居酒屋のBGM
少し前に、居酒屋紀行の掲示板で
「居酒屋にはBGMが必要か否か。そしてテレビは?」と言うような論争
(論争と言うほどではないが)が起こったことがあったが、
私は店の性格に合わせれば良いのではないかと思っている。
仙台の名店「源氏」にはBGMは無い方が良いだろう。
また、「明治屋」も静かに酒を飲むところなので必要ない。
しかし、進化した居酒屋「味泉」や「笹吟」にはジャズが似合うようだ。
また、沖縄の居酒屋なら島唄があると和むし、
津軽の居酒屋なら津軽三味線の音が欲しくなる。
そして、下町の大衆居酒屋にはテレビが不可欠なようだ。
野球やサッカーを見ながら、ああでも無いこうでも無いと常連同士が騒ぎあうのは、
酒場の風景として見慣れたシーンだ。
まあ、酒と会話の邪魔をしなければ良いのではなかろうか?
一つ確かなのは、客同士やご主人との話が弾めば、
BGMやテレビの音は聞こえなくなってしまうのだが。
それでは番組はどうだろう。
8年続いた居酒屋紀行シリーズでは全てジャズのBGMを使ってきた。
これは私の考えだが、音楽はただのバックグラウンドミュージックではなく、
時にはシーンを盛り上げたり落ち着かせたりする効果音的な存在だと思っている。
夜行列車で北海道の大地を目指す時の「ラストトレンホーム」は、
確実に旅情をかきたてる効果があると思うし、
雪の中で見つけた赤提灯に入った瞬間「舟歌」が流れれば
絶対その店は良い店だと思える。(本当に番組で使ったわけではありませんが。)
というわけで、太田さんが美味しそうな酒や肴を口にしたときの音楽は、
ますます美味しそうに感じるような選曲に務めている訳で、
それは、店の雰囲気に合う曲ということもあるが、
もっともっと居酒屋を好きになってもらえるような効果的なBGMをと思っている。
しかし、皆さんには分かってもらえているのだろうか?ちょっと自信はない。
●名居酒屋が多い仙台
東北シリーズ2回目は仙台にお邪魔した。
仙台といえば名居酒屋の多い都市だ。
以前のシリーズでは、源氏、一心、きゃりっこ亭、かん、酔亭、門、
笑仙、ぶんぶん、時郎屋を紹介させていただいた。
その他も個性的な店が多く、私の記憶に残っているのは、
仙台銀座の中にある「さのや」。
酒屋さんがやっている角打ちの様な店だが、古びた店内はとても居心地が良い。
そして、もう一軒は、「重箱」。
ビルの地下にある何の変哲も無い内装の店だが、料理が凄い。
鯨料理などが格安で、とても量が多いので一人では持て余してしまうぐらいだ。
さらにもう一軒は、文化横丁の「やくみ家」。
半地下のような店で、カウンターや小上がりが狭くてなんだかとても落ち着く店だ。
さて今回は、百名居酒屋ということで、大変選ぶのに苦労した。
太田さんと相談し決めたのは「源氏」と「一心」。
対照的な2店を取材させていただいた。
下見も兼ねて取材交渉にまずは「源氏」へお邪魔した。
何も変わらない蔵造りの店内は本当に落ち着く。
個人的にも仙台に来るときは必ず寄るのだが、何度来ても飽きるということは無い。
時間がここだけ永遠に止まっているようだ。
ここで一人静かに酒を飲んでいれば何もいらないという気持ちになる。
BGMもここでは必要ない、というよりは邪魔になるだろう。
(番組では、取って置きの一曲を使わせていただきましたが。)
正に後世に残したい居酒屋N0.1だ。
そして、「一心」へ。日本酒の揃えはやはり素晴らしい。
次から次へ種類を変えて飲んでみたいものだが、
せいぜい3合しか飲めないのが残念だ。
もっと酒が強ければ楽しみも増えるだろう。
一つ残念なのは、以前居酒屋紀行シリーズの時取材させていただいた、
渡辺さんが店を辞められた事だ。
落ち着いた物腰で、若いのにとても気持ちの良い接客をされていたのを思い出す。
●仙台の居酒屋は変わる?
二店の取材交渉も済み、まだ時間も早いのでもう少し回ってみよう、
ということで「酔亭」へ顔を出した。
閉鎖が決まったという東一連鎖街の店だがまだ営業している。
周りの店はもう半分以上閉店しているのだが。
一階はカウンターで二階は部屋になっているらしい。
屋台のような店内だが、良い酒と良い肴が揃っていて、大変楽しめる。
さらに、若いご主人夫婦との会話が格好のつまみだ。
地元の日本酒や食材についてもとても良く勉強されていて、話が弾むこと。
源氏で静かに酒を楽しみ、この店で大いに語り合えば仙台の夜は大満足!
なのに、ここでの営業はあと少しだそうだ。
聞くと、現在新店舗を探しているとのこと。
このご夫婦ならどこでも繁盛店を作ることだろう。
(東京に進出したらと常連客に勧められたそうだが、
わたしとしては是非仙台で続けてほしい。また仙台に来るときは寄らせていただきます。)
確かに、この連鎖街は老朽化しており、
火災などの安全面を考えると危険かもしれない。
しかし、現在の技術を使えば再興できるはずなのに、
本当にもったいないことをしたものだ。
そして、もう一店、惜しい店が閉店した。「仙笑」だ。
理由は分からないが、永年続けてきた店が突然閉店した。
熟年のご主人夫婦と年季の入ったカウンター越しに
話をするのが日課の常連さんも多かったことだろう。残念だ。
どうも最近古くからの名店の閉店が相次いでいる。
跡継ぎ問題など様々な問題を抱えているのだろうが、何とかならないものか。
古ければ良いというものではないが、新しい店ばかりになって
日本文化が守れるのだろうか?
マスコミでは若い店、若者が集まる店ばかり取り上げているが、
それではいけないのではなかろうか?
日本文化を守ってきた古い店こそ、取り上げなければいけないと最近特に思う。
日本文化に興味がある若者たちを古い居酒屋に誘い、
良さを知ってもらい、上手くすれば跡継ぎにもなってもらえるかもしれない。
そんなことを考えるのは年を取ったからだろうか?
日本の居酒屋百件を紹介するまでは、番組は終われないという使命感だけはあるのだが。
●空いている店と空いている時間
閉店を余儀なくされる居酒屋の事情として、客の入りが少ないということもあると思う。
居心地の悪い店なら仕方が無いが、良い店なのにどうして客が来ないのだろう?
と首を傾げてしまう店も多い。
それは、宣伝が下手だったり、変な噂が広まったりと様々な理由があると思う。
しかし、本当の居酒屋好きなら自分の感覚で居酒屋に入ってほしい。
空いている店はなんだか心配とか、空いているから美味しくないのだろうとか、
実際に味わっていないのに敬遠するのはいかがなものかと思う。
(まあ、当番組も片棒を担いではいるのですが。)
そして、繁盛店でも空いている時間はあるはずだ。
開店してすぐとか閉店間際とか。
そんな空いている店や空いている時間が好きなのは私だけだろうか?
空いていれば店の雰囲気は良く分かるし、ご主人や女将さんとの話も独占できる。
そして、なんと言っても一番はゆっくり酒と肴が楽しめるということだ。
周りに騒いでいる客も居ないから落ち着けるし、
板さんの包丁捌きにも注目できる。
こんな良いこと尽くめなのだから是非空いた店、空いた時間に居酒屋に行ってほしい。
まあ、居酒屋ならぼられることも無いでしょうし、
もし自分に合わなかったら他の店にすれば良いのだから。
良い店なのに閉店を余儀なくされることの無いように
我々も考えなければと思う今日この頃です。
●秋の東北は最高!
「日本百名居酒屋」も3回目を向かえ、東京から飛び出した。
向かう先は東北。秋の東北は茸に代表される山の幸、
秋刀魚に代表される海の幸を例に出すまでも無く、何を食べても美味しい。
そして、ひと夏を越えた日本酒ひやおろしだ。
まずは気仙沼に降り立った。気仙沼といえば「福よし」。
あの秋刀魚をもう一度味わえるとは、なんと幸せなことだろう。
実は、前回の取材(4年前)の後、プライベートで一回お邪魔している。
その時は、何品食べたか記憶に無いほど多くの肴を頂いた(たぶん10種類以上)。
最後には隣のお客さんが残したキチジまでおすそ分けに頂き、
大変満足な夜を過ごさせてもらった。
それ以来、3年ぶりだが、ご主人は私の顔をお覚えていてくださった。
早速秋刀魚の塩焼きと鰹の刺身を頂く。まだ戻り鰹には早い時期だったが、
その新鮮な美味しさに目を見張るばかりだ。
そして、20分ほどかけて焼いた秋刀魚。
この味はここでしか味わえない。
私もよくバーベキューで秋刀魚を焼くのだが、到底かなわない。
やはりプロの仕事だ。
ただ焼くだけでこんなにも味が違うとは。
この焼き方に対抗できるのは、釧路の「炉ばた」。
それも先々代の大学みつさんをおいて他にはいないのではなかろうか?
なんと、みつさんは炭の中から取り出した焼きナスの皮を素手でむいてしまうのだ。
(経験のある方ならご存知だろうが、
焼きナスの皮は熱くて到底素手ではむけるものではない。)
取材の時にはたぶん戻り鰹が食べられるでしょうと言う
ご主人の言葉を信じて店を出た。
しかし、取材のときの鰹はまだまだ脂の乗り切った戻り鰹ではなかった。
本来なら10月初旬は、立派な戻り鰹が水揚げされるはずだが、
やはり地球規模の温暖化の影響で
魚の旬も変わってきていると言うご主人の言葉がすごく気になった。
気仙沼の予定は「福よし」だけなので、
このままホテルに帰っても良いのだが、もう一軒寄ってみることにした。
「ダンヒル」というバーだ。気仙沼で一番古いだろうと思われるこのバーは、
マスターが一人で切り盛りする、典型的な地方の町のバー。
どこか懐かしい匂いを漂わせ、マスターとの会話にも郷愁を誘われるところがある。
取材の後にもお邪魔したのだが、太田さん、カメラマン、
私の三人でマスターの話を聞いていると、静かにドアが開き、
熟年の美人が何かを差し入れた。
聞くと、近くの料亭の女将さんだそうだ。マスターはまんざらでもない様子。
地方の小さな町で、幾つも無い飲食店がお互いに助け合って生きている姿は、
とても胸が温かくなる思いがした。
最後はマスターの趣味であるハーモニカを聞かしてもらい
気仙沼の旅は終わった。
(ハーモニカはまったくの自己流で、
なんと左右反対に持って吹くというユニークな演奏だった。)
●地方の店は良いですね。
続いて向かったのは、会津若松。
最近場所を移ったという「籠太」だ。
会津若松は山の中。今度は山の幸だ。8年ぶりに訪ねたが、
前の店とはまるで違う。ご主人は割烹と居酒屋の二束のわらじだったのだが、
体がきつくて一軒に統合させたそうだ。
割烹の建物を改装して居酒屋にしたところが偉い。
割烹と違って、居酒屋はご主人の人柄がそのまま現れるから、
飲んでいても飽きることが無い。そんな居酒屋が私は好きだ。
会津の地酒の話をしている中で、「風が吹く」という最近出始めた日本酒を教わった。
これが美味しい!お土産にと思い一本(四合瓶)お願いしたら
快く酒屋に電話して取り寄せてくれた。
それがまた10分もしないで届くのだからたいしたものだ。
季節は観光シーズン。昼の街には観光で訪れたツアー客が多いのだが、
夜の居酒屋は空いている。籠太のように大きな店でも採算が合うのだろうか?
しかし、私はそんな店こそ頑張ってもらいたい。
都会の居酒屋は客が多くゆっくり酒を飲める雰囲気は無い。
まして、有名店ともなれば予約しないと入れないほどだ。
予約なしにぶらっと入る感じ(最初からこの店に行こうと決めていても)が
居酒屋の醍醐味だ。
まあ、籠太や福よしクラスの店が都会にあったら客が押し寄せるだろうが。
ゆっくり酒を楽しみ、たまにご主人と粋な会話を楽しむ。
大声で呼ばなければ注文も通らないような店にはない落ち着きが、
地方の居酒屋にはある。
そんなひっそりと隠れた名居酒屋を、地方で探し当てたときの喜びは、
生涯の伴侶にめぐり合ったときのように大きいと私は思うのは、私だけだろうか?
その後、もう一軒、以前取材させていただいた「麦とろ」で、
絶品のくじら汁と馬刺し、そして、ご主人の会津なまりを堪能させていただいた。
いや~、本当に地方の居酒屋って良いもんですね。
●肖像権?
皆さんは肖像権ってご存知ですか?
たぶん聞いたことぐらいはあると思うのですが。
これが私ども放送局にとっては考えなければならない重要な問題です。
詳しくは以下のページを参照ください。
http://cozylaw.com/copy/wadai/publicity.htm
今回の「日本百名居酒屋」では、今までのシリーズと変わり、
店の開店前に撮影させていただいております。
「全国居酒屋紀行」が始まった8年前にはあまり重要視されていなかった
(というよりプライバシー保護という認識が甘かった)のですが、
2007年現在では熟慮しないわけにはいかないのです。
よくある話としては、不倫カップルがどこかの観光地を訪れ、
その賑わいをニュース番組で放送された事で問題になったり。
パチンコ店でサボっている営業マンがパチンコの番組で後ろに映っていたりとか。
問題になりそうなシチュエーションはいくらでもあります。
(隠れないで堂々とやってくれれば問題無いのですがね。)
われわれ放送する側としては現場の雰囲気、ありのままを伝えたいのですが、
そうも行かないのです。
画面に映っている人々全員に一人ひとり許諾を頂かなければなりません。
デモ行進に参加する人々や
選挙演説を聞いている人々については許されるようですが、
基本的には道を歩いている人も勝手に映して放送に使ったら問題になります
(なぜこの時間ここいたのか?を知られたくない権利もあるのです)。
居酒屋の場合、4~5人であればお客様に許諾を頂くことも可能だと思いますが、
何十人も入るような店ではそうも行きません。
さらに、許諾を頂こうとすると帰ってしまうお客様もいるでしょう。
そうなっては、取材先の居酒屋さんにご迷惑をかけることになってしまいます。
それは絶対に避けなければなりません。
そこのところをご理解いただければと思います。
●毎年恒例居酒屋紀行番組オフ会
毎年、居酒屋紀行がお休みの夏に番組のファンを集めて
オフ会(まあただの飲み会ですが)をやっているのだが、
今年は、新番組の宣伝も兼ねて盛大にやろうと思い立ち、
赤坂の「まるしげ」にお願いしてみた。
「まるしげ」は赤坂には珍しくリーズナブルで、
日本酒と本格焼酎のラインナップが素晴らしい店だ。
当然、居酒屋紀行シリーズでも登場していただいている。
ご主人に、「いちいち料理や酒を頼むのは煩雑なので、
適当に出しておいてもらい、参加者が勝手に飲んだり
食べたりできるようにしてもらえませんか?」と話すと
快く引き受けてくれた。貸切のできる土曜日なら可能だそうだ。
さて参加者だが、居酒屋紀行の掲示板で発表すると、
すぐさま様々な方々から参加の申し込みが有った。
昔から何度も参加していただいているオフ会常連、
新しく番組のファンになり初めてオフ会に参加される方、
さらに、ネット上で居酒屋巡りブログが大評判のお歴々など様々。
そして、今回は雑誌「TOKIO古典酒場」(三栄書房刊)の
編集長まで参加していただき、総勢60人の大宴会となった。
まあ、皆さんよく飲むこと。
後日お礼にお邪魔した「まるしげ」のご主人が驚いていた。
それにしても、酒とはなんと人の心をオープンにすることか。
オフ会常連はみんな顔見知りなのだが、
初めて参加された方もすぐに溶け込み、しゃべるわ飲むわ!
本当にこの番組をやって来て良かったと思う瞬間だ。
会場では、「日本百名居酒屋」の第一回オープニングを見ていただいたのだが、
皆さん当然のごとく「鍵屋・みますや」は百も承知。
兵は飲み屋街の灯りを見ただけでどこの場所か当てるほど。
そして、皆さんの興味は、「どこが百名居酒屋に選ばれるの?」だ。
しかし、本当にまだ決まっていないのだ。
●百軒の居酒屋選びは簡単ではなかった
8年間に渡る居酒屋シリーズ、放送回数は150回を超え、
全ての都道府県を訪れた。訪ねた店は370件余り。
さらに、まだ取材していない店、太田さんの隠し玉などを加えて、
その中から100店を選び出すのは至難の業だ。
そして、廃業したり、移転、改装した店なども丁寧に調べなければならない。
分かっているだけでも20軒以上の店が廃業しており、
30軒以上の店が改装、移転しているらしい。
(旅チャンネルのホームページ上の店情報は
全面的に改装いたしますのでしばらくお待ちください)
その中でもショックだったのは、広島「流川源蔵」、倉敷「吉備廼家」、
神戸「金盃」、荻窪「東菊」、仙台「笑仙」の閉店だ。
みんな長い歴史を持つ老舗だったのに本当に残念だ。
そして、心配なのは、改装や移転、店主の交代などで
雰囲気が変わっていないかどうかだ。
北千住の「おおはし」は、改装後も個人的に飲みに行っているが、
まだまだ安心といったところ。
阿倍野の「和源」は立ち退きのため移転。
松山の「いこい」も移転。南紀白浜の「長久酒場」の
女将さんは他界されお孫さんが店を継いでいるらしいのだが…。
こんな心配をしていたらいつまでも終わらない。
人間は寄る年波には勝てないというが、
居酒屋も寿命があるのだろうか?第一回目に取材させていただいた、
「鍵屋・みますや」のように、何代にも渡って
同じ場所で長く商売を続けるのは難しいのか?
時代が変わり、人が変わり、価値観が変わってゆく世の中で
本当に良いものを長く続けるのは相当の努力が必要なのだろう。
改めて、老舗の居酒屋に拍手を送りたい気持ちだ。
ということで、今まで取材させていただいた店も、もう一度お伺いして、
お話を聞き、取材のお願いをすることとなった。
(まあ、もう一度美味しい酒と美味しい肴、そして、
面白い話を堪能できるのだから私としては何の文句もありませんが。)
第二回目に取り上げるのは、代々木上原の「笹吟」、
下北沢の「両花」と決まり、早速伺ったが、どちらも何の変わりも無く、
大変良い雰囲気。両店ともまだ20年未満で老舗とは言えないが、
末永く今のまま続けてほしい店だ。
次回からは、地方の店を回ろうと思っていますので、ご期待ください。
秋の東北、九州、そして、冬の北海道。考えただけでも、あっ!ヨダレが!
●日本百名居酒屋はこうして始まった。
1999年から8年間続いた居酒屋紀行シリーズもついに終わり、
ボーッとした毎日を過ごしていたのだが、
ある居酒屋巡りをされている方のブログで、
「たそがれ酒場」(1955年新東宝作品、内田吐夢監督)という映画の話を読み、
早速購入。そんな映画があること自体も知らなかった私には大ショックだった。
なんとも素晴らしい映画だ。
ある酒場の一日をとらえただけの映画だが、
そこには酒飲み達の喜怒哀楽、そして、人生そのものが、
まことに巧く表現されている。
若い時の野添ひとみ、小杉勇、宇津井健、東野英治郎、加藤大輔、
丹波哲郎、天地茂などを見られることも特記すべき映画だ。
皆さんも機会が有ったらぜひご覧ください。
そんな映画を見ているうち、旅チャンネルの編成から、
「居酒屋紀行シリーズはもう終わりにしますか?それとも続けますか?」との
打診があった。
私としては、8年間にも渡り同じ番組をやってきたので、
もうそろそろ潮時か?と思っていたのだが、前述した映画を見たことと、
視聴者の皆さんからのご要望が多いとの報告を受けていたので、
「あと少し続けようか。」との返事をした。
とは言うものの、ニッポン居酒屋紀行ファイナルと言うタイトルで放送していたため、
次のタイトルがうかばない。
「居酒屋紀行ゾンビ」なるタイトルを考えていただいた
視聴者の方もいらっしゃったが、まさかそれは。
それと、全都道府県を回り、ある程度以上の都市にはお邪魔したので、
これ以上番組で紹介できる居酒屋があるのだろうか?
(実際はまだまだあるとは思いますが、)という疑問が心の中にわいてきた。
そんな時、昔飲んでいるときに太田さんが、
「日本百名山に引っ掛けて、日本百名居酒屋ができないかな?」
と言っていたのを思い出した。
旅チャンネルの30分番組はほとんどが月二回放送。一年で24回。
これを2年やれば46回。
すなわち、一回に2軒の居酒屋さんを紹介すれば、
2年と少しで100軒になる。これは好都合だ。
放送10年に向け、全国の100軒の名居酒屋を紹介する番組。
今までに紹介した店も再び訪れることができる。
もう8年も経ったので、変わっている店も、閉店した店もあるはずだ。
それを、アーカイブ(記録映像)も考えて、ハイビジョンで撮ろう。
思い立ったが吉日で、すぐさま編成と話をし、
さらにハイビジョン機器の無かった当社に初めてHDTVの設備が入った。
話はとんとん拍子に決まり、今までDVDを出版していただいた
ジェネオンエンターテインメントの協力も得られることとなった。
さらには、小説新潮の連載も決まり、順風満帆に見えた。
●最初からつまずき
番組の放送が決まり、早速取材店の選定だ。
太田さんが今まで居酒屋紀行シリーズや他の雑誌などの取材、
そして、個人的に全国で巡り合った居酒屋さんの中から
100軒を選び出すのだが、これが大変な作業だ。
最初は、太田さん一押しの湯島「シンスケ」だ。
言わずと知れた東京の名店。
私も何度か訪れたことがあるので、早速取材交渉に行ってみた。
しかし、最初からつまずいた。
雑誌など印刷物なら、ご主人の顔を出さないと言う条件でOKだそうだが、
テレビ番組ではそういうわけには行かない。
ご主人の顔が出ない番組なんて考えられない。
まして、太田さんの居酒屋三原則「いい人、いい酒、いい肴」の
「いい人」がいなくなってしまう。これは困った。
日本百名居酒屋に「シンスケ」が登場しなくては片手落ちだ。
しかし、太田さんは少しも慌てず、
「あと二年あるから、そのうちにじっくり口説き落とせばいいさ。」と事も無げだ。
そうなのだ、あと二年のうちに口説き落とさなければいけない店が
他にも幾つかあるのだ(名前は伏せておくが)。
という事で、以前取材させてもらった
根岸「鍵屋」と神田「みますや」から始めることとなった。
二店ともそれはそれは歴史が古く、
東京の二大老舗といっても良いぐらいではないだろうか。
まあ、居酒屋好きなら知らぬ人はいないと思うが、
改めて太田さんのゆったりとした語りと、ハイビジョンの美しい映像でご覧頂きたい。
●百名居酒屋の証拠
さて、最初の取材店も決まったのだが、日本百名居酒屋の証拠として、
何か記念品を置いて来たい。
当初は、「太田和彦が選んだ日本百名居酒屋」の表彰状や
ステッカーなどと言っていたのだが、ちょっと目立ち過ぎだ。
以前番組内で作った「浮月盃」はどうだろう。
しかし、同じものを作っても芸が無いので、
新しいデザインを太田さんにしていただき、新たに「百名盃」と銘打って、
これから二年間、100軒の店に記念品としておかせていただくことにする。
その盃が有る店が、当番組の取材店である証に。
「太田和彦の日本百名居酒屋」を担当している旅チャンネル、居酒屋のオヤジこと小川洋一です。
1999年スタートの「全国居酒屋紀行」から、
永年番組をご覧頂いている視聴者の皆様には大変感謝しております。
今回、これも永年続いてきました「居酒屋紀行 掲示板」を閉鎖するに当たり、
このブログを立ち上げました。
今後は、このブログにて「髭コラム」そして、居酒屋のオヤジの雑感などを
記事にしていきたいと思いますので、またよろしくお願いいたします。
番組に対するご意見や記事に対するコメントも、どしどしお寄せください。
番組のオフ会もこのブログ上で開催できたら良いですね。
それでは、「日本百名居酒屋」第一回目の「髭コラム」から始めましょう。

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