「太田和彦の日本百名居酒屋」を担当している旅チャンネル、居酒屋のオヤジこと小川洋一が番組の裏話や居酒屋巡りをしている中で思ったことなどをコラムとして書き綴ります。
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髭コラム


2008/01/26 10:37
居酒屋のオヤジ
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日本百名居酒屋紀行 髭コラム
第九回 斉藤酒場・大はし

「太田和彦の日本百名居酒屋」を担当している旅チャンネル、居酒屋のオヤジこと小川洋一が番組の裏話や居酒屋巡りをしている中で思ったことなどをコラムとして書き綴ります。

●東京の名大衆居酒屋と言えば
 大衆居酒屋という言い方があるかどうかは知らないが、大衆酒場という響きにはどこか惹かれるものがある。そこには、人々の人生が見え隠れする瞬間が隠れているような気がするからだ。渋谷の「富士屋本店」などは代表格だろう。100人以上の客がカウンターを前に立って飲む。酒も肴も安い。だから、毎日でも近所のサラリーマン風の人々が寄って、憂さを晴らしていく。池袋の「ふくろ」もそうだ。一階から三階まで一つの居酒屋で、ここまで大衆性を維持している店は珍しい。それも駅のまん前で。関東では珍しいソース二度付け禁止の北千住「大七」もそうだ。もう滅びつつある遺産と言って良いタバコの床捨てが懐かしい。タバコの床捨てと言えば、赤羽の「いこい」もそうだ。この店が私の知る限り東京で一番安いかもしれない。ビール大瓶が380円!まさしく千べろの世界。まあ、まだまだ旨くて安い大衆酒場は多いが、今回百名居酒屋で尋ねることにしたのは北千住の「大はし」と十条の「斉藤酒場」。
 北千住は、前述した「大七」に加え「永見」などの大衆居酒屋がひしめき、一大飲み屋街を形成しているが、そのちょっとはずれに「大はし」はある。4年前に改装したが昔の面影は残っている。床の玉砂利は前の店から取り出して、ふたたび埋めたそうだ。それほど気を使って改装した甲斐があったのだろう、今でもほとんど満員のお客さんで賑わっている。この店の名物は煮込みとキンミヤ焼酎。そして、ご主人だ。注文を‘ホイキタ’と取り、厨房に伝えるとすぐさま小走りで料理が出てくる。その間30秒とかからない。そして、今でも五つ玉のソロバンを抱えて、計算をする。この躍動感は他の店には無い。50人以上は入る店を、息子さんと二人で捌いている。厨房の中もご家族全員で支えている。それも何の滞りも無く。ここまで洗練された動きを持つ店を私は知らない。いくらシステマチックにマニュアルを作り上げても無理だろう。長年作り上げてきた老舗だからこそできる技だ。
 北千住には、居酒屋紀行で唯一取材させていただいた焼き鳥屋がある。焼き鳥屋と言うのはちょっと違うが、「バードコート」である。阿佐ヶ谷から始まった「バードランド」から出た店で、奥久慈の軍鶏の焼鳥は想像を絶する美味しさ。そして、また一つその流れを受け継ぐ店が浦和にできた。「田楽」だ。ここのご主人はバードコート出身で、なんと以前バードコートを取材させていただいたとき、厨房の中にいたそうだ。そのことを、バードコートのご主人野島さんに話すと、「よろしくお願いします」と丁寧にご挨拶された。こうして、名店の流は繋がっていくのだろう。
 北千住で最近人気なのが「徳多和良」だ。前述の大はしとは駅前通りをはさんでほぼ反対側。立ち飲みのみの小さな店だが、その力量は驚くべき。割烹崩しと銘打っているだけあって、料理はひと手間もふた手間もかけられ大変美味しい。さらにそれがほとんど315円なのだ。3品頼んでも千円行かないのだ。お客さんも若手の居酒屋好きから熟年の夫婦まで、皆さんじっくりと酒と肴を楽しんでいる。
 十条、赤羽、王子界隈も大衆居酒屋が多いことで知られる。「斉藤酒場」を筆頭に、王子の「山田屋」、赤羽の「まるます屋」前述の「いこい」、「米山」などなど。一つ一つ上げたらきりが無い。その中で、なんとなく気に入っているのは東十条の「みとめ」。一階はコの字のカウンター。二階は宴会場のようだ。サービスの刺身二点盛りは一品づつ頼むより割安で、ボリュームは同じだ。そして、名物からし焼きだ。甘辛く味付けした豆腐の上に炒めたニンニクとたまねぎがのる料理だが、なぜか東十条名物。病み付きになる。
 さて斉藤酒場だが、もう通いだして何年になるだろう?10年ではきかないかもしれない。自宅が近いせいもあり週に一回ほど通っている。その時々の肴にビールと燗酒。千円をちょっと越える程度しか飲まないが、飽きると言うことがない。常連のお客さんも沢山いる。それこそ毎日来る人が何人か。でも、そのお客さんたちと話し込むことはまず無い。そういう店なのだ。常連客ばかりで入り辛い店も多いが、ここはそういうことも無い。店がある程度広いからかもしれないが、長居をする店ではないからだろう。そこが私にはしっくりくる。一人喧騒の中でボーっとできるのだ。しかし、この店は遠くからの居酒屋ファン、そして、太田さんのファンが多い。取材当日も太田さんはサインを求められていた。
 十条には大衆酒場と言えないが、その他にも良い店がある。斉藤酒場の並びの「お功楽や」だ。まだ新しいが、日本酒の揃えが良く、旬の肴を出してくれるので大変重宝している。実は、この店、浦和で取材させていただいた「丸真」で働いていた方が独立した店だ。なので、酒や肴が丸真と似ている。ご主人はまだ若いので、これから自分の色を出していってくれるだろう。なかなか期待できる店だ。

●最近のテレビ番組
 旅チャンネルで10年間旅番組を続けてきて、(とは言ってもほとんどが居酒屋紀行ですが。他の番組はラーメンや小笠原、沖縄ぐらいかな?これでも以前は民放のドキュメンタリー番組をやっていたこともあるのですが。)民放やNHKの番組に対して最近思うことがある。『どうして、みんなタレントに頼るのだろう?』特に民放は、どこの局でも同じタレントが同じようなバラエティー番組を横並びで放送している。気骨あるドキュメンタリーは皆無の状態だ。確かに、有名タレントを使えば視聴率は上がるかもしれない。しかし、それで良いのだろうか?もっと面白い番組、もっと心に残る番組を熟考していないのではないか?そう思えてならない。
確かに、バラエティーの形を取っていても、なかなか辛らつな内容を伝えようとしている番組もあるが、構成がバラエティーなのでその内容が良く伝わって来ない。内容を伝えるにはそれなりの形があるはずだ。ドキュメンタリーならレポーターやスタジオは必要ないと思う。じっくりと説得力あるナレーションだけで十分ではなかろうか。旅番組なら、旅人やナビゲーターの顔ばかり撮るのはちょっと違うのではないか。視聴者が見たいのは、風景や旅人の目線でタレントの顔ではない。(料理が出てくるときはその限りではない。誰かが食べないとその美味しさが伝わらないので。)
 もっといろいろ考えていかなければ、どんどんテレビ番組の質は下がる一方だ。視聴率絶対主義はただ単に制作者の怠慢を助長するだけではないか。視聴率が高い番組が良い番組とは言えないと思う。面白い番組を作れば、いやでも視聴率は付いてくる。それが制作者のプライドではないのか?自分でも反省することばかりだ。


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